2016年12月31日 (土)

Bookreview Online ブログ移転のお知らせ

 2017年1月1日付けを持って、このブログeo-blogの更新を中止し、facebook(https://www.facebook.com/bookreview.ok/)に統合します。長年放置状態だったため、facebookはフォロワーもいいねもほぼありませんが、今後自由に付けていただいて結構です。facebookの場合アカウントがないと見にくいので、お持ちでない方は暫定的でも登録されることをお勧めします。ハンドル名(記号数字はだめ)などの名前とメールアドレス(これは認証に使うため実在のもの)と生年月日(架空でも可能)だけあれば読むことは可能です。学校名や居住地などは、今後利用しないのであれば登録しなくても構いません。

 すでに告知にありますように、eo-blogは2017年3月末に、ケイ・オプティコム社側の都合により廃止が決まっています。それ以降は過去のblogも含めてすべて消えてしまいます。過去11年分のアーカイブを移す計画はあるものの、移転先は未定。

 また、従来のhomepage(http://www.page.sannet.ne.jp/toshi_o/)はこれまで通り維持されます。その上で、同じ内容をfacebookにも掲載するようにします。スマートフォンなどでご覧になる場合は、facebookだけで完結します。小型画面で見えないわけではありませんが、homepageは基本PC向けとなっています。最近はモバイル向けでないと、検索画面で上位に表示されなくなり利便性が低下しました。今のところ、facebookで見られるのは2015年12月21日以降分です。

2016年12月25日 (日)

ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選

【2016年12月25日】
SFマガジン最初期の60年代から5作、1977年の時間SF特集から2作が採られている。当時(51年~39年前)の解題がそのまま転載され、伊藤典夫の紹介やインタビュー記事(1980年)まで載せるなど、時代の雰囲気再現に重点を置いているのが特徴だろう。純粋な初心者向け入門書というより、むしろ知識の再整理、再入門にふさわしい内容だ……
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《伊藤典夫翻訳SF傑作選》というレーベルが維持できるかどうかは、本書の売れ行き次第だそうです(まだ単行本になっていない中短編は多い)。訳者は1つ1つコツコツとではなく、好きな作品を納得できるまでこだわって訳す姿勢なので、量は捗らずなかなか本にはなりません。とはいえ、今年出たエリスン『死の鳥』は傑作選の範疇に含まれますし、年初に出た《人類補完機構》も一環といえなくはない。日本で現代海外SFを根付かせた、最大の功労者であることは間違いないでしょう。

2016年12月18日 (日)

ゴッド・ガン

【2016年12月18日】
3月に『カエアンの聖衣』(1976)の新訳版、9月には『時間衝突』(1973)の新装版が出るなど、再評価の機運が高まったベイリーの邦訳第2短篇集となる。第1短篇集『シティ5からの脱出』(1978)が出てから31年ぶり。ベイリーは80作の中短篇がありながら、版元とのトラブルが災いして短篇集が2冊しか出ていない(アンソロジイ収録作は多いが)。本書は、大森望がそういう単行本未収録作から10篇を精選した、日本オリジナルの傑作選である……
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今年は、古いSFが新訳や初紹介作など、たくさん出版されました。ヴァンス、スミスやエリスンなどは、過去の遺産といっても古色蒼然ではありません。ベイリーはエリスンと同世代でムアコックの友人ながら、新しいSFとは縁がなくレガシーなSFを書き続けました。ただし、大人しく書いたのではなくド派手に書いたので、全員ではないにせよ、特定の人たちには支持されました。30年ぶりに、ベイリーブームは再燃するのか……。

2016年12月11日 (日)

爆発した三つの欠片

【2016年12月11日】
ロンドン上空に現れた巨大な塊の正体、足の向きを変える死体、カードに混じる必勝の絵札、遺跡で見つかる屍者の鋳型、町から見える沖で次々と座礁する船、酒場で取引される因縁ある品、異国の神に対する独白、湖から蘇る鶏のように鳴くもの、セラピストが執る究極の療法、舞台の残忍なパフォーマンスが生み出した何か、病気を演じる模擬患者、燃える角、感染者が生み出す円形の溝、海から上がってくる失われた人工物、死体の骨に描かれた細密画などなど……
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ミエヴィル3年ぶりの翻訳。大部の短篇集です。掌編から中編まで、趣向もさまざまで幅広く楽しめます。最近は岸本佐知子さんらによる外国文学の短篇集がたくさん出ていますが、本書も翻訳好きならジャンルに関わりなく十分楽しめると思います。拷問のときに使う虫とか、人と一緒に袋に閉じ込める動物とか、切られた家畜の首を被るとか、不気味なもの好きには特に。ただし、スプラッタではありません。

2016年12月 4日 (日)

ヒュレーの海、世界の終わりの壁際で、最後にして最初のアイドル

【2016年12月4日】
『ヒュレーの海』未来のいつか。文明は混沌に呑み込まれ崩壊、情報的記録の海が地球を覆う。人類はシリンダ型の塔のような都市に住み、都市は7つの序列を持ち、さらに資本家と労働階級に分かれる。人類はある種の情報生物となって世界に適応している。そんな中、過去の記録にある本物の海を見ようと、下層民の少年少女は旅立つが。
『世界の終わりの壁際で』未来の東京は山手線の内側に壁を築き、その外部との出入りを遮断している。内側にある〈シティ〉は、大規模な環境変動から逃れるための箱舟なのだ。外側で育った主人公は電脳ゲームの名手だったが、ある日アルビノの少女や奇妙な人工知能と出会ったことで、内側世界の秘密を知ることになる。
『最後にして最初のアイドル』アイドルオタクになった少女が、都会でアイドルになろうともがくが挫折。その一方、地球全体を襲った太陽フレアの猛威により、文明どころか生物相までが激変する。しかしアイドルになるという妄執に囚われた少女は、その意識だけを保ちながら残された生物の進化に干渉する……
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第4回ハヤカワSFコンテストの優秀賞2作と、特別賞作品です。特別賞の『最後にして最初のアイドル』は中篇のため、電子書籍でしか出ていません。前2者はなろう系作家(〈小説家になろう〉サイトで書く89万人の作家のこと)で、サイトで既発表作を改稿したもの。未公開原則に反するのではないかとの指摘もあったようですが、無償公開なので編集部的には不問との判断です(作品講評にあり)。中では『最後にして最初のアイドル』が話題沸騰、小説じゃないあらすじだという批判は、元ネタのステープルドンがそうなのだから仕方ありません。ステープルドンは通読困難なので、読みやすいオラフ系といえるのかも。

2016年11月27日 (日)

代体

【2016年11月27日】
「代体」とは人間の脳活動そのものをヒューマノイド型アンドロイドに移し、人体の代わりとする技術である。その性格上、重病や怪我などの治療時に使用する以外は、法的に厳しく制限されていた。あるとき、代体利用者の殺人事件が発生、調査を開始した内務省特殊案件処理チームは、背後に潜む意外な存在を知ることとなる……
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コピーされた人格は人間なのかそうではないのか、イーガン的テーマで書かれた山田宗樹の書下ろし長編です。どちらかというと、ワンアイデアをさまざまなバリエーションで見せたイーガンと違って、応用版となった本書では犯罪や親子関係、家族関係など、ふつうの小説で描かれるテーマの上で物語は進むのがミソ。何重にも重なる秘密の解明が面白い。

2016年11月20日 (日)

セルフ・クラフト・ワールド三部作

【2016年11月20日】
【第1部】まずセルフ・クラフト内のゲーム空間で物語は始まる。主人公はゲーム内で独自進化を遂げる生物の観察をしている。付き従うゲーム内キャラクタは、熊本弁を喋る従者だ。そこに謎の集団が現れ、生物の情報を盗み取ろうと暗躍する。
【第2部】セルフ・クラフトが生み出す生命は、リアル世界の日本が独占する重要な戦略資源となっている。その利権を巡って、日本と世界は暗闘を演じていた。駆け引きに明け暮れる首相は、老人となったかつての友たちの動向を知る。
【第3部】対立は誤解の果てに核戦争に発展、日本の大半は壊滅する。その中で、一人の情報技術者は生き残ったネット環境を探す。一方、セルフ・クラフト世界では、広大な地域が突然消滅するという謎の現象に襲われていた……
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ゲームデザイナーとして有名な著者のハヤカワ文庫4-6作目に相当します。ゲーム的な世界を舞台にした異世界ものは、世の中に溢れていますが、それと現実世界が深く関わるお話は少ない。特に本書のように、国家レベルの関わりとなると珍しいでしょう。未来のお話なので、首相をはじめ出てくる老人が今20歳代のゲーム世代で、その世界に入れ込んでしまうのもご愛敬。モデルはSF大会に参加している「老人」たちだそうです。いつまでたっても、元気というかお子様というか……。

2016年11月13日 (日)

Visions ヴィジョンズ

【2016年11月13日】
大森望編のオリジナル・アンソロジイだが、経緯は少し変わっていて、もともと2012年に講談社のマンガ雑誌イブニング向けに、マンガとのコラボとして企画されたもの。残念ながら、コラボされたのは2014年の飛浩隆「海の指」/木城ゆきと「霧界」のみで終わり、それと残った5作を単行本化したものが本書である(危うくお蔵入りになりそうになったのは、『危険なヴィジョン』に倣った表題に問題がありそう)……
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大森望編では今年短篇集や傑作選は出たものの、オリジナル・アンソロジイは『NOVA+』が出なかったのでこれが最初になります。とはいっても実際は4年前の企画で、危うくお蔵入りになるところでした。Visionsという名前が悪いというのは、ハーラン・エリスン編『最後の危険なヴィジョン』が原稿(1979年時点の目次では150編余)を集めたきり、ついに出なかった幻/伝説のアンソロジイだからです。その昔、被害者であるプリーストが同書について、批判本?をファン出版したこともあるくらい。これは都市伝説ではなく、ある意味史実ですけどね。

2016年11月 6日 (日)

カムパネルラ

【2016年11月6日】
主人公は16歳の高校生、亡くなった母の遺骨を、遺言どおり岩手県花巻の川に散骨しようとしている。ところが、宮沢賢治ゆかりの地に足を踏み入れたとたん、昭和8年の9月、賢治が病死する直前の時代に転位する。しかも、そこでフィクションであるはずの『銀河鉄道の夜』の世界に囚われてしまうのだ……
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カムパネルラといえば宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」ですが、原著(未完成のまま死後公刊された)の3次草稿と4次草稿にどんな差異があるのかは、あまりよく知りませんでした。評者が昔読んだのは、宮沢賢治研究による決定稿が出る前の4次版だと思います。それほど長くないので、早川書房の《世界SF全集》『日本のSF古典篇』などにも入っていました。3次版にはマッドサイエンティスト(のようなブルカニロ博士)が出てくるので、そこを生かして本書はSFになっています。

2016年10月30日 (日)

翼のジェニー

【2016年10月30日】
初期傑作選とあるが、過去サンリオSF文庫で出た『カインの市』から『杜松の時』までの4長編は、原著が1974~79年に出たものだった。本書の中短編はそれ以前のもの、まさに原点の作品が選ばれている。ジュヴナイルのような幻想譚「翼のジェニー」、ウィルヘルムの名を高めた「一マイルもある宇宙船」、中編「エイプリル・フール……」などは、『クルーイストン実験』(1976)でより深く考察された、医療サスペンスものの原型を思わせる……
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80年代にサンリオSF文庫で4長篇が出て、90年代にミステリが創元推理文庫や福武書店で翻訳されたウィルヘルムですが、以降ほぼ忘れられて20年が経ちました。本書が出たのは、2014年の『サンリオSF文庫総解説』での再評価にもよるのでしょう。まったく同じ作品でも、読む時代、読む年代によって受け止められ方は大きく変わります。半世紀を経たウィルヘルムの初期作品をあらためて読むと、時代を超越した本来のエッセンスがうかがえます。

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